いちご市場
いちごの生産量
順位 | 県名 | 作付面積(ha) | 収穫量(t) | 構成比 |
---|---|---|---|---|
1位 | 栃木県 | 506 | 23,100t | 15.41% |
2位 | 福岡県 | 421 | 15,200t | 10.14% |
3位 | 熊本県 | 287 | 11,100t | 7.40% |
4位 | 愛知県 | 248 | 10,500t | 7.00% |
5位 | 静岡県 | 295 | 9,900t | 6.60% |
6位 | 長崎県 | 253 | 9,690t | 6.46% |
7位 | 茨城県 | 239 | 9,260t | 6.18% |
8位 | 千葉県 | 216 | 6,420t | 4.28% |
9位 | 佐賀県 | 150 | 6,150t | 4.10% |
10位 | 宮城県 | 136 | 4,560t | 3.04% |
その他 | ー | 2,029 | 44,020t | 29.37% |
全国計 | ー | 4,780 | 149,900t | 100.00% |
出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)」の「令和5年産野菜生産出荷統計」より
いちごは生食用として子どもから高齢者まで幅広い年齢層に好まれています。洋菓子等の業務需要もあって一年中安定したニーズがあります。
いちごの作付面積は令和5年で4,780ha、出荷量は149,900tとなっています。主な産地は、栃木県と福岡県を中心に、熊本県、長崎県、愛知県、静岡県となっています。
この多くは、ハウスでの促成栽培が主流で、概ね9月に定植され、冬から春にかけて収穫、出荷されています。
北海道や東北地方の一部で、夏から秋にかけて収穫する夏秋どり栽培が行われていますが年間約3,000tと国内生産量の2%程度に留まっています。
この品薄期を補うためアメリカなどから輸入されていますが、夏から秋にかけて、いちごは品薄となります。
夏秋期を中心に業務用出荷
私たち、リアスタ―ファームでは夏から秋にかけての品薄期に着目し、三陸沿岸地域で夏秋期を中心に周年での夏いちごの栽培、販売を行っています。栽培品種は四季なり性の「なつあかり」「信大BS8-9」「夏の輝」です。いずれも酸味と甘味のバランスがとれた品種です。また、わたしたちの「三陸の地を夏いちご産地に」の想いを込めた「さんりく星苺」ブランドとして広く展開しています。
三陸の特徴
夏冷涼で冬寒すぎず日照が長い
私たち、リアスターファームのある三陸沿岸地域は、北部に「海のアルプス」とも称される豪壮な大断崖、南部には入り組んだ地形が優美なリアス海岸が続きます。
また、三陸沖で寒暖両流が接する海岸性の気候ですが、中部以北では主として寒流の影響で気温は一般的に低く、特に夏には海霧が多く発生し、梅雨時には「やませ」の影響を受けて冷湿となることが特徴です。一方、冬は積雪がほとんどなく、中部以南では比較的寒すぎず日照が長いことが特徴です。
いちごの主要産地である宇都宮(栃木県)、福岡(福岡県)、苫小牧(北海道)と比較するとその特徴は際立ちます。
こうした気候特性は、いちごを冬春期に収穫する促成栽培、夏秋期に収穫する夏秋どり栽培のいずれの作型も可能としています。事実、この地域では両方の栽培方法が混在していた時期もあり、三陸沿岸地域がイチゴ栽培の適地であることを示しています。
私たち、リアスターファームの周年栽培技術は、この三陸地域の気候特性に根ざした独自のものとなっています。
周年栽培技術の研究開発
三陸沿岸地域でのいちご栽培
私たち、リアスターファームのある陸前高田市を含む気仙地域では、古くはいちごの栽培が盛んに行われ、40戸の農家があったと聞いています。
しかし、次のような問題によって次第に生産農家が減少したのことです。
従来方式の問題点
- 小面積・単年春どりのためいちご栽培だけでは生計が立たない上、病害虫被害が発生した場合、収入が減少する。
- 家族労働中心のため収穫最盛期には休めず、労働負担が大きい。
- 収益に対する初期投資コストが大きい。
- 低利益のため後継者が不足している。
周年栽培の実証試験
こうした従来方式の問題点を克服し、東日本大震災からの復興に向けた、新たな農業振興を図るため、岩手県農業研究センター南部園芸研究室では中山間地域でも可能な高収益型の施設農業のモデルを構築すべく、実証試験を行うこととなりました。
三陸沿岸地域の気候特性は、促成栽培、夏秋どり栽培のいずれの作型も可能にしていることを踏まえ、年間を通じて栽培・出荷できないかと検討しました。
さまざまな条件を調べた結果、2年8季どりの作型を1年ずらして2つ走らせて切れ目のない周年栽培方式が可能なのではないかとの結論に達し、実証試験に取り組むことととなりました。
2013年から2017年までの5年間の実証試験の結果、次のような優位点が明らかになりました。
新方式の優位点
- 面積当たりの採苗・育苗に係る労力・費用が半減する。
- 環境制御により単位面積当たりの収量が増加する。
- 周年で収穫できることから収入が途切れることがない。
- 小規模分散立地により、病害虫被害のリスク分散ができる。
ハンモック式ベンチ
電照出蕾制御とクラウン温度制御
環境制御盤
実証試験結果
2013年から実証試験を開始し、施設のあり方、環境制御、栽培方法などを試行錯誤し、四季なり性品種(なつあかり)による2年8季どりができるようになりました。2016年から2017年にかけての収穫量実績は以下のとおりです。
栽培品種
甘味と酸味の絶妙なバランスの四季なり性品種
私たち、リアスターファームは米崎農場(陸前高田市)、浦浜農場(大船渡市)、津軽石農場(宮古市)の3農場で夏いちごの栽培を行っています。
私たちが栽培しているのは、四季なり性品種「なつあかり」「信大BS8-9」「夏の輝」の3品種です。今年から新たに「夏のしずく」が加わります。
なつあかり
2007年
農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター開発
「サマーベリー」×「北の輝」
<特徴>
・大玉系、やわらかい、濃赤色
・夏品種の中でも糖度高く、生食向け
・栽培がかなり難しく、生産量が少ない
信大BS8-9
2011年
信州大学開発
「サマープリンセス」×「女峰 自殖2世代分離系」
<特徴>
・多玉系、硬い、鮮赤色、光沢有
・糖と酸のバランスが良い、香りが強い
・ある程度日持ち性有
・冬季はヘタ近辺に白みが少し残る
夏の輝
2013年
農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター開発
「盛岡30号」×「スイートチャーミー」
<特徴>
・多玉系
・食味がよい、さっぱりとした酸味
栽培施設・設備
夏いちごに最適化した2年8季どり栽培
夏いちごは温度によって果実をつけるかどうかが決まります。
三陸沿岸地域の夏冷涼で冬寒すぎず日照が長いという気候特性は、夏いちご栽培の大きなアドバンデージになっていますが、併せてハウス内環境を制御することで夏いちごに最適な生育環境を整えています。
これらの環境制御設備は、岩手県農業研究センター南部園芸研究室の実証試験の成果を踏まえながら、現場で得られる日々の新たな知見を加え、継続して改善しています。
耐候性木骨ハウスは、木楽創研株式会社(本社:大船渡市)の特許技術による農業用施設です。小規模分散立地のほか、連棟することにより大規模化も可能なフレキシブルな構造となっています。
軽量鉄骨ハウスに比較して内部温度が2~3℃低くなります。また、耐過重性もあり、換気扇や遮光カーテンなどを吊るすことができます。栽培ベンチはハンモック式で杉樹皮培地で苗を固定し、養分・水分は滴下方式で供給しています。
花の開花をコントロールするため、ハウス側面の開閉、遮光カーテン、ミスト噴霧、換気扇などの設備を備えています。
これらの設備は、温度や湿度などをセンサーでキャッチし、自動で動作するように設定しています。
私たち、リアスタ―ファームでは完熟した果実を摘み取ることとしています。
いちごは高温に弱く、そのままにしておくと表面が軟くなり傷んでしまいます。そのため、摘果後すぐに5℃の冷蔵庫で予冷します。
この冷蔵庫も栽培ハウス内に設置し、品質保持に努めています。
収穫から出荷までの流れ
収穫から出荷まで徹底した低温管理
いちごは完熟することで赤みと甘みが増し、おいしい果実になります。しかし、完熟した果実は熱に弱く傷みやすい繊細なものです。
私たち、リアスタ―ファームでは完熟したいちごをお届けするため、収穫から出荷までの工程を低温下で行う徹底した品質管理を行っています。
①外気温
完熟した果実を手で一つひとつ丁寧に収穫します
②外気温
果実が重なって傷まないように取り扱います
③5℃
収穫した果実はハウス内冷蔵庫で予冷します
④10℃
常時10℃の選果場で規格・サイズに合わせて選別します
⑤5℃
選果後、常時5℃のプレハブ冷蔵庫で保管します
⑥1℃
形の良い「秀品」は常時1℃の冷蔵庫で保管します
⑦5℃
プレハブ冷蔵庫内で出荷用に改めて選果し、整えます
⑧5℃
出荷用段ボール箱を重ねて梱包します
⑨8℃
近隣地は弊社保冷車で、遠隔地はクール宅配便で配送します